ベセスダシステムを考える

2011年10月11日 in 未分類/2011年10月11日 カテゴリー: 未分類

10月22日東京で行われる第50回臨床細胞学会秋期大会シンポジウムでベセスダ診断様式の中から、AUS(意義不明な異型)について発表いたします。いろいろ調べているうちに、単なる診断基準の問題だけではないことが分かりましたので、ここに投稿いたします。

以下に示す論文では、日本での約束事と異なり、濾胞性腫瘍と診断して、手術して非腫瘍性の良性であった場合、良性と診断し、経過観察させたが、結果的に(良性であっても)腫瘍であった場合、誤判定とされるようです。理由は、臨床対応が異なる群に診断/分類したからです。乳頭癌を見逃す確率が高まるのと同列に論じているのは驚きでした。

Shi Y et al:  Atypia of Undetermined Significance. A necessary or optional category. Cancer Cytopathol, 117: 298-304, 2009.

ベセスダの運用には、細胞診断と臨床的対応が明瞭にリンクしている時と、曖昧で、臨床医の裁量に任されるのとではその意味合いが異なることが分かりました。甲状腺細胞診の問題点の解決に、ベセスダシステムは重要な提案をしているのですが、日本の現状に合わず(日本よりも強制力を持った形でその後の臨床的対応を指定していること)、日本的風土としては、臨床医の裁量を認める形が取られると予想されますので、ベセスダシステムの導入には、周辺環境の整備が必要と思うようになりました。もうひとつ私が推定することは、このAUSには不良検体が相当数含まれていることがあります。このAUSのカテゴリーを新設することにより、『検体不適、再検査してください。』をAUS(結果的に再検査は同じ)とすることにより、2つの効果を狙っていると考えました。不良検体とせず、1)臨床医の自尊心を傷つけず、2)検査室のinspectionの評価を上げる効果を狙っている、とも考えました。日本では不良検体が20%以上多くあっても、罰則や、検査室の閉鎖などは行われませんので、このようなことを目的とするのであれば、このカテゴリーは必要ないと考えます。

フォーラム開設の趣旨

2011年9月29日 in ご挨拶/2011年9月29日 カテゴリー: ご挨拶

1973年に和歌山県立医科大学を卒業し、38年間にわたり病理専門医として、細胞病理専門医として、また教員 として、腫瘍病理の研究者として過ごしてきました。2011年3月に和歌山県立医科大学を退職し、今までと少しペースを変えてこれからの人生設計を考える 中で、このホームページを開設し、社会に対し38年間の集大成を発信していきたいと考えました。特に病理医不足、病理学研究の衰退が医療全体にどのような 影響を与えるか危惧しています。このホームページを通じ皆様と意見を戦わせることを意図しました。

(1)医療の質を検証する役割を持つ病理診断部門
(2)医学教育における病理学の役割
(3)医学研究における病理形態学の役割

などに焦点を絞り議論したいと思っています。